シリーズ構成・虚淵玄、制作・ポリゴンピクチュアズのCGアニメ三部作の第一作「GODZILLA 怪獣惑星」のBlu-rayが発売されました。
私はこの第一作は劇場では観ておらず、レンタルが始まったので「まぁ観てみるか」程度の期待ゼロの状態で借りてみたんですが、これが予想外にかなり面白かったんですね。
個人的にはゴジラ自体は結構好きなシリーズです。
どの程度好きかと言うと、今まで買ったソフトは第一作「ゴジラ」(1956年)のクライテリオン版Blu-rayと庵野秀明版「シン・ゴジラ」の2本でした。
今回、あまりに面白かったので「GODZILLA 怪獣惑星」(以降アニゴジ)も購入したので、通算3本ですね。
今まで一番好きなシリーズ作品は、昭和版の「ゴジラ対メカゴジラ」でした。
さて、アニゴジ一作目が面白かったものですから、折りよく公開している二作目「GODZILLA 決戦機動増殖都市」を川崎チネチッタのLIVE ZOUND版で観に行きました。
結論から言うと、物凄く面白かったです。
私の中ではゴジラ映画の最高傑作という位置づけになりました。
SF・戦争・人間ドラマとして面白い
前作「怪獣惑星」もそうでしたが、まずSFとして面白いし、戦争物としても迫力があり、手に汗を握る展開でした。
しかも人間ドラマ部分がしっかり描かれていて「怪獣がカッコよければいい」なんて言う趣味映画じゃありません。
二作目の「決戦機動増殖都市」は、前作のこの3つの要素「SF・戦争・人間ドラマ」が順当にスケールアップしています。
ですので、一作目を良かったと感じた方は、今すぐ劇場に行くべきです。
絶対に後悔しないと思いますよ。
私は虚淵玄脚本の作品では「Phantom」は好きなんですが、まどマギやらFate/Zeroやら楽園追放やらはイマイチ良さが分からなかったクチです。
が、アニゴジに関しては脚本・設定が抜群に面白いですね。
一作目の内容に触れますが、絶対的な破壊の王としてのゴジラの出現に呼応して「エクシフ」「ビルサルド」という「宇宙人」が地球人にコンタクトを取ります。
ゴジラのシリーズで宇宙人が絡むのは昭和版からよくある展開なんですが、虚淵脚本だとこの2種族の設定が一味違うんですよ。
「スタートレック」や「2001年宇宙の旅」と言った、ちょっと気取った系のSFが好きなファンには実に分かりやすく、馴染みのある志向を持った宇宙人達で、志向性の異なるこの2種族の間で揺れ動き、悩み、右往左往する地球人という構図が実に上手く描かれています。
第一作が公開された時は「まぁどうせブームに乗った商業戦略で、映像がちょっと豪華ってだけのアニメだろう」と思ってスルーしてしまったのですが、どうしてどうして、虚淵玄脚本はやっぱり緻密で深く、展開も予想外で面白いじゃないですか。
戦争映画としての面白さ
タイムラインのある戦争物はだいたい面白くなります。
つまり「何のために、いつまでに、どの地点で、どのように戦闘をしかけ、どんな形で目的を達成するのか」というオペレーションが明確に示されている戦争物はまず一定の面白さが保証されていると言っていいです。
作戦が順調に進行していたとしても固唾を飲みますし、途中でアクシデントが起きたり、最終目標に到達しても想定の結果にならなかったりと、展開のパターンはそんなに多くないんですが、まァたいがい面白くなりますよね。
アニゴジに関しては一作目「怪獣惑星」もタイムラインのある戦闘でしたし、二作目も大体同じです。
これでワンパターンに感じさせないというのは、先に述べた人間ドラマが実は主軸になっていて、派手な戦闘や怪獣は、映像的なカタルシスを観客に与えるという役目を充分に果たしつつも、そんなに重要じゃないからでしょう。
ポリゴンピクチュアズは音響も含めて戦闘描写が非常に上手く、怪獣映画と言う事でスケールも巨大なため映像的には明らかに戦闘シーンがメインです。
が、アニメに良くある「何か雰囲気でド派手な戦闘してる」感じにはならず、ちゃんとリアリティがあるのは、作戦にタイムラインがある脚本のおかげと言うのも大きいと思います。
例えば「プライベート・ライアン」ってオープニングの10分が派手な以外、残りの尺は一切面白くありませんよね。
でも「遠すぎた橋」は大失敗したグダグダ作戦なのに最初から最後まで展開から目を離せず、手に汗握ります。この違いです。
まぁアニゴジに関して「ヤシオリ作戦」みたいな作戦名を付けなかった点については、きっと制作陣も悩みどころだったでしょう。
SF映画としての面白さ
独自の宗教観を持ち、牧師のような立場でありながら、主人公ハルオ達と作戦行動を共にするエイリアンの一種族「エクシフ」のメトフィエス(CV櫻井孝宏)は精神性の象徴で、合理性とは真逆ですがミスタースポックのような雰囲気。
合理性を重視し、宇宙知性との同一こそ至高と考える「ビルサルド」のムルエル・ガルグ(CV諏訪部順一)は、ゴジラを倒すべき敵とみなしつつも生物としては神聖視さえしている「エイリアン」一作目のアンドロイド、アッシュのようなキャラクター。
この2人に代表される「人型生物の進化の向かう先」が、実写映画や小説ではありがちと言えばそうなんですが、少なくともアニメやゴジラ映画ではなかなか見ないSF要素で、個人的には大好きです。
主人公のハルオ・サカキは子供の頃ゴジラに地球を追われ、宇宙船での放浪生活を20年以上強いられてきました。
彼の主張は、人類はゴジラと言う超自然災害に全てを奪われ、それは衣食住を奪われたと言うだけでなく、地球を捨てた結果人類は人間性も尊厳も失った、というものです。
その耐え難い怨みを晴らすために、共に戦う2つの先進人類(エクシフ・ビルサルド)のどちらの主義に依るべきなのか、という迷いが二作目「決戦機動増殖都市」では大きなテーマになっています。
これはつまり「知恵を絞ってゴジラを殺すんだ」という戦争映画でありながら一方で「人類は一体どのように進化するべきなのか」というSF映画の側面を持っているんですね。
CVと容姿から穏やかな印象を受ける「エクシフ」が正しいように一見思えるんですが、劇中でもそう簡単には割り切れないのが脚本の妙です。
この「CVと容姿」の設計が上手いなあと思うんですが、私からすると「エクシフ」の方がより邪悪な存在に思えます。
まず声が櫻井孝宏で、名前が「メトフィエス」ですよ。
これ、明らかに「メフィストフィレス」の意味で、ファウスト博士を誘惑して堕落させた悪魔の名前ですからね。
人間ドラマとしての面白さ
主人公のハルオ・サカキはなかなかイケメンなんですが、ちょっとサイコパス気味です。
目の前で両親の乗ったバスがゴジラに吹き飛ばされたせいか、ゴジラから逃げて宇宙放浪生活を選んだ人類は惰弱な敗者で、それを罪だと考えています。
「逃げずに戦えば勝てるはずだったのに」「宇宙に逃げ出したせいで尊厳を失った」という思いからハルオ君、一人でゴジラ殺害作戦を立案して最終的には指揮を執る立場になるわけですが、地球時間で2万年も経過してとっくに怪獣惑星となってしまった地球の奪還に対して、巻き込まれた600名の兵員は皆がみな、ハルオのようなモチベーションを持っているわけではない。
この辺りの軋轢や、2種族のエイリアン達が巧みに誘導するのに実はただ流されているんじゃないか疑惑のハルオ達地球人のドラマが、わずか100分弱の尺に凝縮されています。
つまり「皆で力を合わせ、知恵と勇気でゴジラを倒すんだ!」という単純な話に見えて、実は全くそうではない。登場人物達がどいつもこいつも曲者めいており、逼迫した状況も相まって話の展開に全く飽きが来ません。
例えば「シン・ゴジラ」はゴジラの出てくるシーン、対ゴジラの戦闘シーンは何度も見返したくなる程インパクトがありますが、それ以外の、登場人物達がてんやわんやしてるシーンって一切面白くないし、早口言葉選手権で全くの無意味じゃないですか。
あれは人間ドラマがゼロなんで戦闘シーン以外がただの無駄な尺と化しているんですが、アニゴジはそうではなく、戦闘に至るまでの場面も戦闘シーンに負けず劣らずハラハラします。
あえて難点をあげると・・・
私の中ではアニゴジ第二作「決戦機動増殖都市」は現時点でシリーズ最高傑作の作品なんですが、ベタ褒めしつつも気に入らない点はいくつかあります。
ヒロインが地味過ぎる
ヒロインと呼べるのかどうか・・・。
一応ユウコ・タニという女の子がそれっぽい立場で、二作目では大活躍します。
が、問題は見た目ですね。
可愛くないし、地味過ぎます。モブ子です。
それを補うためか相当の巨乳ちゃんで、二作目ではアーマーを脱いでタンクトップになるのでこれでもかと胸のでかさを強調しています。
・・・ですが、コレ一切揺れないんですね。
大げさに揺らせってワケじゃなく、微動だにしないから、なんか固いカタマリにしか見えないんですよ。
全然魅力的ではありません、ひたすら不自然です。
こういう表現を「中途半端」と言います。
体幹を動かす度に自然にちょっと揺らすだけで柔らかい感じが出ると思うんですけどね。
キャラクターとしての性格は可愛いし、演技も細やかで重要な位置を占めるヒロインポジなんですが、いかんせん見た目が残念過ぎます。
ゴジラのデザインがイマイチ
造形的にはまんまギャレ版のゴジラです。
恐竜と言うよりは熊に見えるデザインですね。
で、こういうカッコいいゴジラは、人類の敵じゃダメです。
これは人類の味方のゴジラのデザインです。
ゴジラの造形で私的に最高なのは「シン・ゴジラ」で、流石に庵野秀明は分かっているなあと思いました。
1作目の「ゴジラ」もそうですが、気持ち悪い、怖い、異常な奇形生物が「人類の敵としてのゴジラ」なので、そういう意味では「シン・ゴジラ」に勝るデザインは、未だかつて存在しません。
ゴジラというのは1作目から放射性物質の落とし子で、あの皮膚はケロイドを表しているんであって、シルエットが恐竜でも爬虫類ではありえないわけです。
アニゴジではさらにCG表現がイマイチで「生き物とも金属とも、どちらにも見えない何か固そうな石?みたいな皮膚」になっちゃってます。
正直、このゴジラの表現では「凄い熱線を撃つただの兵器」という、ただのシンボルに見えてしまいます。
人間が一生懸命レールガンやらハープーンやらでその皮膚を貫く猛攻撃を加えても、血も出なければ何のリアクションもないので、何か「デカくてめっちゃ固い石像」に向かって弾を撃っているだけに見えるんですね。
「絶対的な破壊の王で、通常兵器は一切通用しない」というのを表したかったのも分かります。
何せ一作目で、熱核兵器30発だかの同時攻撃に耐えた、なんて表現があるぐらいですから。
でも、それだと「背びれの破壊に成功」とか「ハープーンを体内に撃ち込んだ」とか言っちゃいけないと思うんですよ。
そういう作戦って言っちゃう以上、ちゃんと効いている様を絵で表現してくれないと。
サブタイトルがひどい
「東京特許許可局」もとい「決戦機動増殖都市」って・・・。
いや、内容的にはその通りですよ。
でもセンスないですよね。
このサブタイトルで観に行きたいと思いますか?
これは、映画を最後まで観た人だけが「あぁそういう事ね」と理解できるサブタイトルです。
じゃなくて「メカゴジラの逆襲」とかでいいんですよ、内容的にも。
「生きとったんかワレェ」ってワクワクしながら観に行くじゃないですか。
で、本編観て「あぁそういう事ね」ってなるわけです。
一作目の「怪獣惑星」というサブタイトルは良かったんですけどねぇ。
とまぁ文句も言いつつ何度も繰り返しますが、この「GODZILLA 決戦機動増殖都市」は私の中で最高傑作のゴジラ映画です。
ちょっと調べてみると第一作は興行的にも大失敗で、この二作目も酷評ばかりだそうな。
いや、ありえないですね、どんだけ見る目無い連中なんだ・・・。
日本公開2018年
監督 :静野孔文・瀬下寛之 脚本:虚淵玄・村井さだゆき・山田哲弥 101分 出演:宮野真守・櫻井孝宏・花澤香菜・
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オススメ度:5.0/5.0
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最高。ぜひ劇場へ行ってあげて。 |