花沢健吾原作のホラー漫画「アイアムアヒーロー」を実写化した映画を観てきたので感想など。
ネタバレありです。
私は原作漫画は全巻買って読んでいるぐらいなので、かなり好きな部類です。
ホラー漫画と書きましたが、これはいわゆる「ゾンビアポカリプス」物で、私はゾンビ物はメディアを問わず大好きです。
最初に断っておきますが、原作漫画は非常に面白い、良く出来たゾンビ物です。
なのでこの映画にもちょっと期待していたんですね・・・。
男性陣の見た目の再現度は100%と言っていい。女性陣は美人度250%増し。
主人公の鈴木英雄、サブキャラの男性陣及び、キーとなるゾンビの見た目の再現度は非常に高かったです。
原作が劇画寄りで日本人の顔をリアルに描いているというのもあり、本当に漫画のキャラクターがそのまま映像化されたと言っていいレベルでした。
逆に女性陣はヒロインからして原作版がそんなに可愛くない。リアルにその辺にいそうな日本人女性として描かれているんですね。
ですがそこは興行収入に直結するからなのか、実写版は綺麗どころの女優で固めていましたね。それはそれでいいんじゃないでしょうか?
特に文句はございません。
ゾンビの造形・グロ表現・CG等はかなりレベル高し。
エンドクレジットを見ると「韓国パート」といった表記や韓国人?らしき名前がずらずらっと出てくるので、舞台設定は日本なんですが撮影は韓国で行ったんでしょうか?
VFXを担当したのが日本のスタッフなのか、韓国のスタッフなのかは分かりませんが、映像のクオリティはかなり高かったと思います。
原作に何体か特徴的なゾンビが出てくるのですが、先に書いたように非常に再現度が高く、飛び散る脳漿、血飛沫といったゾンビ映画には欠かせないグロ表現も、今の海外のゾンビ物と較べても恥ずかしくないレベルに見えます。
このあたりはスタッフさん、良く頑張ったと思います。
ストーリーが原作を薄め過ぎ。キャラクターの深みもかなり削がれている。
原作を端的に言い表してしまうと「日本版ウォーキングデッド」という事になります。
※ゾンビの脅威については、移動速度が「ウォーキングデッド」より速く、「28日後」より遅い、といった感じで、古典的なウスノロゾンビよりは少数相手でもヤバイ感じですね。
ゾンビウイルス蔓延により既存の社会が崩壊し、人間は「ゾンビ」と「秩序を失った人間の集団」との両方との殺し合いを生き延びなければならない。
ゾンビと人間、どちらがより凶悪な敵なのか?どちらの「腐りっぷり」がよりおぞましいのか?
とまぁ、ゾンビアポカリプスにはよくある展開なんですが、この題材は大概面白くなりますよね。
ですが実写映画の方は尺の関係なんでしょうが「ゾンビパニック」といったレベルにとどまっており、生きている側の人間の醜さ、惨めさ、おぞましさと言った原作のテイストはかなりカットされています。
まず主人公の鈴木英雄が、単にうだつの上がらない普通の男になってしまってます。
2巻で打ち切られた漫画1本以外、これと言った実績も無く、売れっ子作家となっている同期デビューのマンガ家を尻目にアシスタントとして社会底辺付近でくすぶっている主人公の鬱屈とした妄想癖や、同じく漫画家を目指す恋人との危うい関係(映画では恋人の徹子は何者とも描かれていない)は殆どカット。
原作の鈴木英雄は自分でも「何者にもなれない」と自虐めいていますが、まずマンガ家という時点でそれなりに個性はあります。
何かと言うと妙な動きのパントマイムだかなんだかのパフォーマンスをするので、ビジュアル的には充分面白いんですよ。
これも実写化では完全スルー。こういう理不尽な行動とか映像化するだけでキャラに奥行きが出ると思うんですがね。
映画の方では性格も「ちょっと自分に自信が無く、空想と独り言が少し多い以外は普通」にしか見えませんでした。
原作では見ているこちらがイライラするぐらいヘタレで、言い訳がましく行動が遅い、まぁダメ男っぷりが突き抜けているキャラクターで、何で生き延びているのか本当に不思議なヤツなんですね。
こういった社会的にも精神的にも弱い男が「趣味がクレー射撃で散弾銃を持っている」というアドバンテージはあるものの、周りでバッタバッタと強者が死んでいく中、何故か生き延びていく様が面白いんですね。
ヒロインの比呂美についても映画では背景が全く描かれておらず「パニックの発生した街中でたまたま出会って以後行動を共にする女子高生」以上終了。
この子は途中で半ゾンビ化するんですが、原作ではそもそも主人公との出会いが「恒常的に軽いイジメにあっている」事が原因で、やはり「崩壊する前の社会」では低いカーストにいた人間なんですね。
半ゾンビ化する前から妙ににゾンビへの理解を示すような行動に出たりと、やっぱりどこか普通じゃないんですよ。
とまぁ実写化にあたり、主に尺の関係でいろいろ改変され、原作のドロドロとした人間関係のテイストもストーリーを進めるのに必要最低限まで切り詰めた結果、映像はかなり高いレベルにあるしそれなりに原作を上手くまとめているが、1本の映画として観た場合に実に平凡でつまらない、という出来になってしまったと思います。
ぶっちゃけ、途中で眠気を覚えました。
どちらかと言うと原作を読んでから観るのをおススメ
原作を読んでいて、好きだと言う人は「うわーこのキャラ見た目そっくりだあ。」という楽しみ方が出来ます。と同時に「なんであの面白い原作がこんな退屈な映画になってるんだよ。」という幻滅も感じるでしょう。
原作を読んでいない場合はさらに救いようが無く「なにこの退屈なゾンビ映画。家でウォーキングデッド観てるほうが1万倍は楽しめるじゃん。」という結果になります。
ですので、わざわざ劇場に観に行くほどの価値は無かったです。
かなり後悔・・・。
2016年
監督:佐藤 信介 原作:花沢 健吾 キャスト: 大泉 洋 有村 架純 長澤 まさみ |
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オススメ度:2.0/5.0 | レンタルで充分 |