「フリクリ オルタナ」に続いて期間限定公開された「フリクリ プログレ」を観たので感想を書きたいと思います。
ちょっとネタバレを含みますが、正直言ってバレを気にするようなストーリーではございませんでしたね。
いかにも続編って感じの続編で、驚きは無い
前作「FLCL」とのつながりが希薄だった「オルタナ」に比べ「プログレ」の方は井の頭ゴロー風に言うと「いかにも続編って感じの続編だ」という事になります。
どちらがいいとか悪いとかは別にして「FLCLの続編を普通に作ったらこうなるだろうな」という感じの作品でした。
私は「FLCL」についてはDVD-Boxを買うぐらいには好きだったんですが、続編としての「プログレ」を楽しめたかと言うとやっぱり「普通」でしょうか。
実験的な映像表現や、ダイコンフィルムっぽい板野サーカス推しの動きは「オルタナ」には無く「プログレ」ではキチンと入っています。このあたりも「続編だな~」という印象を強くしています。
「オルタナ」と比較するとアニメ的な面白さはこちらの方が勝っています。
ですが、結局やっている事は「FLCL」と殆ど同じなんですよね。
水瀬いのり演じる雲雀弄ヒドミが人外になって、ぶっ壊れた地球で巨大アイロン軍団と戦うアバンから始まり、これは「トップをねらえ2」的なカルトSFになっているのか?と思いきや、お話が進むとそんな事は一切無く、アバンについても「え?あのシーンどこ行ったの?ただの夢オチ?」という肩透かしをくらいました。
アバン後は普通にアトムスクに執着するラハルがいて、感情が昂ぶるとエキゾチックマニューバを出せるキャラがいて、ラハルがべスパに乗ってギターでデコを殴りに来る、っていうアレのまんまです。
正直、イマイチよく分からない設定のオンパレードだった
大筋は先ほど書いたとおり「エキゾチックマニューバの超パゥワアーを手に入れてアトムスクとヨリを戻したいラハルが思春期の少年少女にちょっかいを出し、最後にアトムスクが現れるもまた置いていかれる」という「FLCL」と同じ展開です。
・・・なんですが、今回の主役である雲雀弄ヒドミが何故あんな自閉的且つ、夢では奔放な性格なのか、とか、父親がいないし母親も実の母ではないとか、じゃあどういう出自なんだよとか、あのヘッドフォン結局何?といったところが全く明かされていません。
意味があるようで無いのか、あるけど気にする必要が無いのか、それすらよく分からないです。
ヒドミに関しては何話めかで、現実でも夢の中での奔放な性格に180度ひっくり返って変化してしまうんですが、クラスメイトに「どうしたの?」と聞かれて「前からずっとこうだったよ」と答えます。
これは(本当の性格を隠していただけ)という事なんでしょうが、理由が想像もつきません。
こういった置いてけぼり感も「FLCL」っぽいんでしょうし、特に気にする程の事でも無いんでしょうけれども、相手役の井出交という男子にいきなり恋しちゃってる展開も含め、あまりに詰め込みすぎていて大筋以外さっぱり分からない、というのが正直なところでした。
この闇鍋感も含め「フリクリ」なのかも知れませんが、「FLCL」はここまでカオスな状態では無かったように思います。
そういう意味では「Progressive」と言えるんでしょうか。
「オルタナ」が「日本のインディーズ実写映画にありそうな話」と以前の記事に書いたとおり非常に分かりやすいテーマで構成されていただけに「プログレ」については「深夜アニメに良くある設定詰め込み過ぎ投げっぱなし」感が強かったですね。
2人のハル子「ラハル」「ジンユ」について
今回、ハル子は「ラハル」「ジンユ」という2人のキャラに分裂しています。
この分裂は「オルタナ」のラストでイベントホライズンを越える時に起こったっぽい表現がされていたので、時系列的には「オルタナ」の直後のように見えました。
分裂した「ラハル」は「FLCL」以上にアトムスクに執着しているキャラで、一方の「ジンユ」は逆にラハルに対し「アトムスクへの執着をやめろ」と諭すキャラになっています。
これを観て思ったのは「オルタナ」の「ラハル」の性格です。
「オルタナ」でラハルが丸くなったというか、「FLCL」のラハルとは違いアトムスクにさほど執着していないし、17歳JKズに対してやたら思いやりを見せるキャラになっていたのは、この「ジンユ」の要素がラハルの中に生まれ育っていたからなのか、と納得しました。
ラハルの変化については雲雀弄ヒドミの母親のセリフ「変わらず待っていればいつか夫(失ったもの)が帰ってくると思っていたけれど、何もしなくても人(娘=ヒドミ)は変わっていく」という良くあるヤツなんでしょう。
が、なんでイベントホライズン越えたら「ラハル」と「ジンユ」に分離したの?ってのは謎です。
「プログレ」では「ラハル(林原めぐみ)」「ジンユ(沢城みゆき)」と声優が別になっており、ラハルも新谷真弓ではありません。
林原版ラハルは新谷版に喋り方も声質もかなり似せており、そっくりだと言えます。
声優に興味が無い人が聴いたら「オルタナ」のラハルと同じ声に聞こえるでしょう。
なのにわざわざ声優を変えているんですが、これにはちゃんと理由があってプログレ版ラハルは「オルタナ」とも「FLCL」とも違うラハル、だからです。
「FLCL」のラハルよりも、より純粋にアトムスクに恋焦がれている存在なのがプログレ版なので、一見同じに見えても違う、という事ですね。
これは「ラハル」と「ジンユ」のキャラクターデザインで一目瞭然ですし、「オルタナ」のラハルのデザインを観てもやっぱり「FLCL」とは微妙に変化している、という点から分かりますよね、普通。
結局何も進展していないのがいいのか悪いのか
前作「FLCL」から18年も経過しての続編なんですが「プログレ」を観る限り話は何も進展していません。
新たな展開があったかと言うと別に無く「ハル子とアトムスクの追いかけっこは、これからも永遠に続く」的な終わり方です。
「フリクリ」のファンにとってそれがいいのか悪いのかは別として、18年も経ってからコレを作った意味って何だろう、と思いました。
最初に「アニメ的な面白さはオルタナよりプログレの方が上」と書きましたが、どちらが好きかと問われれば私は「オルタナ」の方です。
分かりやすくスターウォーズで例えると、オルタナのラハルはエピソード4のベン・ケノービであり、若きジェダイを導く立場になってるんですね。
前作とプログレのラハルはどちらもエピソード3までのオビワンなんですよ。
世代が変わって舞台設定もガラっと変わっているので、新鮮な気持ちで観れるという事です。
エピソード3を観てからエピソード4とエピソード1を観て、どちらが面白いかっていうとエピソード4ですよね。
「プログレ」について「トップをねらえ」に対する「トップをねらえ2」のような展開を期待していたので、要は18年も経ってるんだから新しいものを観たかった、という感想です。
ですので制作側にワンチャンあるとしたら、次は「トップをねらえ2」にして盛大に売っていく、って事でしょうか。
「オルタナ」のように青春群像劇にエキゾチックマニューバを絡めて、ラハルが仙人みたいに若者を導く、ってシリーズでも個人的にはアリなんですがね。
ただ、今回「オルタナ」「プログレ」を「劇場限定公開」を観て思ったのは「6話一気に劇場で観るのは非常に疲れる」。
正直、Blu-rayでゆっくり観た方が良かったんじゃないか。
もともと客の動員数なんて期待していないもんだから、大して設備の良い劇場でかけてくれないしさぁ。
フリクリ プログレ | 総監督:本広克行
監督:荒井和人、海谷敏久、小川優樹 脚本:岩井秀人 キャスト:林原めぐみ 制作会社:Production I.G 公開:2018年 136分 |
まぁ・・・普通ですか。過度な期待は禁物。 |