ボーダーライン:ソルジャーズデイを観てきました~ネタバレ無し感想

アイキャッチ・2021年春秋アニメ「86ーエイティシックスー」が非常に面白いので全力おススメしてみる 映画

ドゥニ・ヴィルヌーヴが監督した「ボーダーライン」の続編「ボーダーライン:ソルジャーズデイ」を観てきました。

脚本は前作と同じテイラー・シェリダンで、私の大好きな俳優ベニチオ・デル・トロを筆頭にジョシュ・ブローリンや脇を固める俳優陣も前作から続投しているキャストが多かったです。

但し、監督はステファノ・ソリマとかいう無名監督に替わりました。

2016年に日本公開された前作は非常に素晴らしい映画で、続編である今作についても個人的にはかなり期待していたんですよね。

その「ボーダーライン:ソルジャーズデイ」ですが、感想は全然ダメ、ただのB級アクション映画に成りさがっとる」です。

脚本、俳優が良くても監督、カメラが無能だとここまで駄作になるという典型的な例でしたね。

銃撃戦に緊張感が全く無い

銃撃戦が何回かありますが、どれもこれも引きのアングルで淡々と大人数が撃ち合うだけの、B級アクションにありがちなダメダメ演出でした。

前作「ボーダーライン」では冒頭のFBI突入作戦、囚人護送でメキシコ国境を越える場面、塹壕での銃撃戦、アレハンドロの単独潜入、ラストのケイトとアレハンドロの対峙といった全てのシーンにおいて、観客にも「殺意を持った相手に銃口を向けられている緊張感」が痛い程伝わってくるカメラでした。

例えば前作では、囚人護送中の何も起きていない移動シーンですら画面から一瞬も目を離せない程緊迫しています。

それは、エミリー・ブラント演じる女性FBI捜査官がメキシコという麻薬カルテルが支配する無法地帯を初めて訪れるというシチュエーションで、常にカメラは彼女を主体として追っているからこそ伝わってくる効果でした。

プロの兵士を演じている優れた俳優の演技、特に表情をしっかり映しているので、生命の危険に晒されている場面での彼らの緊張感が観客にも伝染するんですね。

今作はこういった「誰目線なのか」という物語の主軸が全くない上、銃撃戦が常に俯瞰カメラなので、前作と似たような脚本、シチュエーションにも関わらず臨場感ゼロの映像になっちゃってます。

今回も銃撃戦のシーンが何回かあるんですが、どれもこれも「カメラの前に全員集合してよーいドンで一斉に撃ち合い開始、10秒後にはなんとなくアメリカ側が勝ってる」こんな感じです。

「銃撃戦?あぁ派手なアクションシーンね。適当に空砲撃ちまくれば終わりでしょ?」という手抜き感満載、まさにB級監督です。

いかに前作のドゥニ・ヴィルヌーヴが映像作家として優れており、今作のステファノ・ソリマがボンクラなのかが分かりますね。

名優を起用しているのに、演技を撮るつもりがない

上に書いた内容と被りますが、今作のステファノ・ソリマとかいう監督はアクションシーンを撮るセンスも無い上、基本的に俳優の演技を撮る事に全く興味が無いようです。

表情のアップを見せるべきシーンでも常に中途半端に引いたカメラで、観てるほうはすごくフラストレーションが溜まります。

この監督、セリフが言えてれば演技なんてどうでもいいとかいう、そんなレベルですね。

特にラスト、酷いです。

いくら演技に興味が無い監督とは言え、あそこでベニチオ・デル・トロの顔に寄せないカメラってありえないでしょう。

前作では、主演俳優陣はもとより、敵役、ひいてはサイドストーリーのメキシコ警官親子にいたるまで、きっちり表情と演技を撮っていました。

さらに言うと、冒頭のカルテルの拠点への突入シーンで、家の壁に埋め込まれた数十体の死体が発見されるんですが、この物も言えない死体の顔のアップをググーっと映すんですよ。

顔にはビニールが被せてあるんですが、これが半透明なビニールなんですね。

この血まみれのビニールで微妙に隠された顔のアップ、もちろん俳優が演技しているわけじゃないんですが、監督はこの絵を撮ることで、死体にすら演技をさせています。

死体は当然として、誰のセリフもそこには入ってきません。

ですが、首から上が袋に詰められた肉塊のようにしか見えない、無残に殺された名も無き死体が、この顔にじわじわズームしていくカメラとBGMによって物凄い声で叫んでいるように観客には感じられるんですね。

この冒頭のシーンだけで、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が俳優の演技に非常に重きを置いている事が分かります。

比べて今作のステファノ・ソリマとかいう、聞いた事もない監督ですよ。

こいつの耳元で「知ってるか?お前が適当に撮ってるのな、アカデミー俳優やぞ?」と叫んでやりたいと思いましたね。

 

前作「ボーダーライン」でせっかくアレハンドロ、マットという強烈なキャラクターを生み出し、映画としても素晴らしい出来に仕上がったのにも関わらず、その資産をドブに捨てたのが今作ですね。

優れた脚本と名優を使ってもゴミが出来上がるという、とても残念なダメダメ続編でした。

あー期待ハズレだった!

ボーダーライン:ソルジャーズデイ 監督:ステファノ・ソリマ

脚本:テイラー・シェリダン

キャスト:ベニチオ・デル・トロ
ジョシュ・ブローリン
マシュー・モディーン
キャスリーン・キーナー

公開:2018年

122分

ベニチオ・デル・トロとジョシュ・ブローリンが出てなかったら確実に星0

こちらの前作はドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の傑作

タイトルとURLをコピーしました