私はFF14をプレイする時は長らくソニーのMDR-1RNCという有線のノイズキャンセリングヘッドフォンを使っていました。
このヘッドフォンはもう生産終了になっていますが、音質もノイズキャンセル機能も申し分ありません。
数年来使っており、故障したわけでも無く普通に使えているのですが、1点だけ不満があります。
「ケーブルが邪魔」
ヘッドフォンって頭に装着するものなので、有線だと当たり前のように体を横切るし、私は複数のデスクとPCを並べてアクセスしたりするので、椅子ごとPC間を移動する際にウッカリするとこのケーブルがひっかかります。
当然付属のケーブルでは長さが全く足りないので、延長用のオーディオケーブルを継ぎ足しているのですが、これがまたPCとの距離によって長さが余ったり余らなかったりして本当に鬱陶しいです。
なので前々から、ワイアレス且つノイズキャンセル機能があるヘッドフォンに替えたいなあと思っていました。
今回、散々悩んだ末、ヘッドフォンは「Bang & Olufsen H9 3rd」PCからのBluetooth送信はCREATIVEの「BT-W2」を購入したのでレビューしたいと思います。
FF14をプレイするには音質が酷すぎる
もう最初に言ってしまいます。
「Bang & Olufsen H9 3rd」と「BT-W2」の組み合わせだと、FF14のSEが凄まじく酷い音質になりました。
ワイアレスが必須じゃないなら、これでFF14をプレイするのは全くおススメできません。
どのように酷いかと言うと「段ボール箱の中に壊れたラジオを置いて、そこからSEが流れてくるのを、箱の中に頭を突っ込んで聞いているかのような」音になります。
まるで100均で売ってそうなイヤホンで聞いているレベルの音質で「くぐもった音が妙に遠くから聞こえてくる」本当に酷い有様です。
ノイズキャンセルのせいか?と思ってANC(Active Noise Canceling)をOn/Offしてみましたが、Offにしたところで音質は向上しませんでした。
おかしな事に、BGM等の音楽に関しては別にそんな事は無く「ふつう」レベルの音質になっています。
メディアプレイヤーで音楽を聴いても「まぁふつう?」といったレベルの音質です。
FF14内の全てのSEだけがあからさまに酷い音質になります。
ゲームのBGMに関しては、FF14に限らず主張が激しすぎてうるさくて堪らないので、私はたいがいインゲーム内のコンフィグで音量0~50%にしてBGMだけ音量を下げています。
アクションゲームなんか、BGMをミュートにする事すらあります。
なのでゲームの音=SEが最重要なんですが、このヘッドフォンとBluetoothトランシーバーの組み合わせでFF14をプレイした時は愕然としました。
IDに行った時が本当に悲惨で、ガンガン発生するバトルエフェクトのSEが終始段ボール箱に頭を突っ込んで聞かされているかのような酷い音質になります。
それまで使っていたソニーのMDR-1RNCは、もちろんこのような怪現象は無く、BGMだろうがSEだろうが音質はかなり良かったので、落差が凄まじいですね。
「Bang & Olufsen H9 3rd」と「BT-W2」を選んだ理由
まずヘッドフォン側「Bang & Olufsen H9 3rd」から
- aptX Low Latencyという最も遅延が少ないコーデックに対応している
- ノイズキャンセル機能有り
- Bluetooth + ノイズキャンセル使用状態でバッテリーの持ちが25時間と凄まじく長い
次にCREATIVE「BT-W2」を選んだ理由
- aptX Low Latencyという最も遅延が少ないコーデックに対応している
- CREATIVE製品は多少信用しているし、ネットでの評価も高い
aptX Low Latencyの遅延と音質
このブログでも書いたことがあるのですが、私はそもそもBluetoothって規格を基本的に信用してません。
世に出てきたのがそもそもの間違いの、考案者を筆頭にさっさと絶滅させるべき糞規格だと思ってるんですが、何をトチ狂ったのか世の中では最近ますます普及してきてますね。
きっと安いんだろうな、作るのが。
で、ワイアレスヘッドフォンと言えば今や新製品はBluetoothばかりで、さらにノイズキャンセル機能付きとなるともうBluetoothしか選択肢がありません。
Bluetoothヘッドフォンでは常に「音質」「遅延」の問題があり、aptX Low Latencyというコーデックは今のところ「それなりに高音質かつ低遅延で、映像視聴やゲームに最適」と言われています。
ネットで調べた情報をまとめると以下のような表になります。
コーデック | ビットレート(Kbps) | 遅延(msec) |
SBC | 328 | 220 |
aptX | 352 | 70 |
aptX HD | 576 | 105 |
aptX Low Latency | 280~420 | 40 |
AAC | 256 | 800 |
LDAC | 330~990 | 1000 |
ビットレートは値が高い方が高音質、遅延は値が低い方が低遅延です。
これを見ると、ゲームや映画を観るのにいかにBluetoothという貧相な規格が向いていないか分かりますね。
60FPSで動いているゲームは1フレームが約16msecですから、最も低遅延のaptX Low Latencyでさえ、ゲーム中で音を発生させてからヘッドフォンに到達するまで2.5フレームも遅れています。
LDACなんて1秒遅れる頭のおかしい仕様ですよ。
aptX Low Latencyは、なんか面倒臭い仕様らしく、対応している製品が非常に少ないです。
で、「Bang & Olufsen H9 3rd」は、対応コーデックが「AAC」「aptX Low Latency」の2つだけと言う変な仕様になってます。
当然送信するトランシーバーもこのaptX Low Latencyでデータを送らなければなりませんが、CREATIVE BT-W2は「aptX」「aptX Low Latency」「SBC」「FastStream」に対応しています。
ですので、
- ゲームに使用するのが目的
- ワイアレスであること
- ノイズキャンセル機能も必要
であれば、この組み合わせは決して間違ってはいません。
遅延は全く感じないが、ゲームのSEは100均のイヤホン以下の音質
遅延に関しては、まぁさすがに公称40msecと言うだけあって全く感じません。
ゲームプレイには全然支障が無いと言っていいでしょう。
その代わり街中やIDのSEが100均のイヤホン以下の音質になっちゃいますが。
最初に断っておきますと、あくまでFF14をプレイした時にSEが凄まじく酷い音質になるという話であって、これが絶対に「Bang & Olufsen H9 3rd」のせいであるとは限りません。
aptX Low Latencyというコーデックのせいかも知れないし、トランシーバーのBT-W2がダメダメなせいかも知れません。
ですが、結果としてこの組み合わせでは、肝心のゲームプレイで100均のイヤホン以下の音質になってしまったわけです。
明らかに53,000円の価値は無い「Bang & Olufsen H9 3rd」
まずクソ高いですね。
Bluetoothヘッドフォンに設定していい値段じゃないですよ。
これだけ高いんだからどれだけ凄い製品かと思いきや、正直なところ、何にそんな金をかけているのか分かりません。
Amazonの中華業者レビューや、企業運営の個人を偽装したステマブログではこの製品、やたら絶賛されています。
- 音質が素晴らしい。最高!
- 掛け心地も素晴らしく、長時間掛けていても全く疲れない!
等とまことしやかに書かれている記事を沢山見つける事ができると思いますが、実際に買って使ってみた感想は
- (FF14のSEはおいといて)音楽を聴いたところで音質は「並以下」。
- メディアプレイヤーで音楽を聴いていると、定期的に「ブツ」「ブツ」と音飛びがして不快。
- 掛け心地は全く良くないし、何の工夫もされていない。ヘッドバンドがカチンカチンの鉄板に極薄のウレタンを接着しただけのものなので、ヘッドバンドが直接頭に当たる感じがする。明らかに他のヘッドフォンよりも早く頭が痛くなってくる。
です。
これが 3,000円ぐらいのヘッドフォンなら「まぁこんなもんか」ですけどね。
他にも不満点いろいろ
この53,000円もするヘッドフォン、他にもいろいろ言いたい事があります。
ただ操作しづらいだけのタッチセンサー
このヘッドフォン、なんとボリューム調整をする場合は「右スピーカーの外面を時計回りあるいは反時計回りになぞる」という仕様になってます。
さらに、ANCのOn/Offも「右スピーカーの外面を上から下へなぞる」と、OnだろうがOffだろうが同じ「ピッ」という音が鳴って切り替わります。
どうもこのヘッドフォン、スマホで使うのが前提らしく「音楽の再生・停止」「曲送り」「Transparency Mode切替」「通話に出る」といった機能もあるのですが、これらも全部同じ「右スピーカーの外面をタッチであれこれする」事で操作します。
要するに電源On/Off以外は全て「右スピーカーの外面にあるタッチセンサーをなぞる」事でしか操作できません。
そして電源On/Off以外の物理スイッチが一切無いため、たとえば「あれ?ANCって今Onになってる?」というのが見た目で分かりません。
「ANCのOn/Offなんて、音を聞けば分かるでしょ」と思われるかも知れませんが、例えばゲームのSEがガンガン鳴っている状態だと、結構区別がつきません。
もちろん無音状態でOn/Offすれば明らかに分かりますが、ゲームを起動した状態だともうお手上げです。
「これANC効いてる?効いてない?」とか思いながらプレイする事もしばしばです。
PCと接続して使う場合、他にタッチが必要になる操作は「ボリューム調整」なのですが、これがもう最悪です。
「耳を覆っているスピーカーの側面を時計回りになぞる」って操作が、タッチが効いているのかどうかも分からなければ、ヘッドフォン側の音量が今Maxなのか、Minなのかもさっぱり分かりません。
さらに、音量を操作しているつもりがANCをOffにしてしまったりという誤爆が頻発して非常にストレスフルです。
とにかく値段を吊り上げるためにわざと不要で不便な機能を追加したとしか思えませんね。
オンラインマニュアルが雑過ぎ
公式サイトから落とせるオンラインマニュアルはたった3ページのPDFファイルですが、その3ページのうち2ページ分は「スマホアプリの説明」です。
スマホとペアリングして使う場合、専用アプリをダウンロードしてそのアプリでいろいろできるらしい。
残る1ページに書かれているのは「充電方法」「ペアリング方法」「タッチセンサーの説明」だけです。
「各部名称」すらありません。
例えばこのヘッドフォン、左スピーカーにも何かスイッチが付いてるんですよ。
これについての説明がどこにもありません。
「ダミーか?」と思って触ったらクリック感があり、ビープ音が鳴りました。
一体何が起きたの?ねえ?
何故公式マニュアルに記載が無いの?
と思っていたら、実は化粧箱が二重底になっており、中に入っている小さなクイックスタートガイドには各部名称が書いてありました。
実はこれ「Google Assistant起動スイッチ」だそうな。
Android端末とペアリングした時だけのために物理スイッチを追加するという開発のセンスの無さよ。
どうせ物理スイッチを追加するなら、どう考えてもプラットフォーム関係なくユーザーが頻繁に使うANC On/Offの用途で作るべきでしょう。
それに大抵のノイズキャンセルヘッドフォンには、NCのアクティブ状態を示すためのLEDが付いていますが、この「Bang & Olufsen H9 3rd」には電源インジゲーター以外のLEDはありません。
極めて好意的に解釈してバッテリー持ちのためにLEDを極力省いているとしても、わざわざ左スピーカーに追加した物理スイッチが、Androidユーザー限定、しかもクソ使えないGoogle Assistantを起動するためのスイッチって、控えめに言って頭がおかしいと思います。
5,000円以下ですぐにBluetoothヘッドフォンが使えるBT-W2
サウンドカードでお馴染みのCREATIVE製品です。
デスクトップPCのUSBポートに挿入してサウンドデバイスとして機能します。
さらにこのデバイスは、同時にBluetoothトランシーバーにもなり、USBに挿すだけでBluetoothヘッドフォンで音を聴くことができるようになります。
CREATIVE製品にありがちな専用ソフトをインストールする必要も無く、Windows10であればドライバすら不要で、USBにデバイスを挿すだけで本当にすぐ使えるようになります。
このお手軽さと5,000円以下という価格からすると、確かに非常に良くできた製品ですね。
極めてシンプル且つCREATIVEにしては安価な製品なため、作りもマニュアルも超シンプルです。
どのコーデックが使われているか知るすべが無いし、選択もできない
シンプルなマニュアルにも一切書かれていませんので、CREATIVEの分かりづらい、動作もおかしな公式サイトを探し回りました。
以下はサポートページの奥深いところにある「○○についてよくある質問」コーナーのキャプチャです。
凄いですよねぇBluetooth界隈。
「aptX Low Latencyに対応」とデカデカと書いてあるのに、実際そのコーデックが使われているかどうかユーザーには一切区別できないって事ですよ。
そう言えば今まで何も気にせず、ソニーのBluetoothノイズキャンセルヘッドフォンをスマホ用に使っていたりするのですが、コーデックってどうなってるんでしょうか?
当然のようにヘッドフォン側には「コーデック選択スイッチ」なんてものは無いので、ヘッドフォンとトランシーバー側で適当に対応しているコーデックで合意してるんでしょうが、この雑な対応がいかにもBluetoothですね。
今回に限れば「Bang & Olufsen H9 3rd」の対応コーデックは「AAC」「 aptX Low Latency」で、BT-W2の対応コーデックは 「aptX」「 aptX Low Latency」「SBC」「 FastStream」なので、共通するのは「aptX Low Latency」のみですから確実にこれが採用されているはず・・・。
ワイアレスの快適さは代えがたいが、FF14をプレイするのに「Bang & Olufsen H9 3rd」はおススメしない
「Bang & Olufsen H9 3rd」が3,000円ぐらいなら買っても良いですが、53,000円では余りに危険な賭けと言わざるを得ません。
例え音質が酷いのが「Bang & Olufsen H9 3rd」のせいでは無いとしても、この程度の品質のヘッドフォンにつける値段では無いです。
明らかにボッタくり過ぎ。
実は aptX Low Latency対応、ノイズキャンセル機能有のヘッドフォンは極めて希少ながら他にも製品があります。
というかAmazonでは他にこれしか見つかりません。
こちらはお値段たったの7,700円弱。
何故今回これを買わなかったかと言うと、バッテリーの持ちが「Bang & Olufsen H9 3rd」は25時間に対し、こちらはBluetooth + ANCで15時間という、この1点のみの差です。
なので、これから同じような条件でFF14をワイアレス且つ低遅延且つノイズキャンセルでプレイしたい、と考えている方がいるなら
「悪いことは言わないから安い方にしときなさい」