私はFF14を現在、Bang & Olufsen H9 3rdというステマブログで絶賛されているデンマーク製のワイアレスノイズキャンセリングヘッドフォンでプレイしています。
以前レビュー記事を書いたんですが、このヘッドフォン、ワイアレスであるという点と、aptX-LLという今現在Bluetooth方式では最も遅延が少ないコーデックに対応している点には満足しています。
ですが、それら以外に気に入らない点が多々あります。
具体的には以下の通りです。
- FF14のSEの音質が酷くなる
- 値段がぼったくり過ぎ
- 装着感が最低で、今まで使ってきたどのヘッドフォンよりもすぐに頭が痛くなってくる
- タッチパネル操作が使いづらい
はっきり言うと\53,000という値段に全く見合っていない、イマイチどころかイマサン、イマヨンの製品だという事です。
Bang & Olufsen H9 3rdのノイズキャンセリング性能が落ちてきた?
私は自作PCを組む時に静音性は全く考慮しないのですが、そのせいかPCの駆動音が結構なレベルで聞こえます。
また、暑い季節、寒い季節にエアコンをガンガンかけると送風音がゴゥゴゥと響きますね。
1度ノイズキャンセリングヘッドフォンでこういった雑音が一切消えた状態を経験すると、もう元には戻れません。
Bang & Olufsen H9 3rdもアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能があり、最初は普通に雑音が消えていたのですが、最近、たまに「あれ?ANCが効かなくなってる?」と思うぐらい雑音が聞こえることがあります。
条件は全く分からないのですが「完全にANCがOFFってわけじゃないが、いつもの50%ぐらいしか雑音をカットできていない」という現象にしばしば遭遇するようになりました。
これが非常に気持ち悪く、原因も解決法も分からないので、購入してからわずか半年なんですが「捨てちまうか…」と思った次第です。
ソニーのWH-1000XM3はゲームの使用に耐えるのか
結局、随分悩んだ末にソニーのWH-1000XM3を購入しました。
悩んだのはこのヘッドフォン、対応Bluetoothコーデックが、 SBC, AAC, aptX, aptX-HD, LDAC だけなんですね。
aptX-LLに対応していないため、最も遅延が少ないaptXを使ったとしても70ミリ秒の遅延があります。
最も良い状態で70ミリ秒の遅延だとして、60FPSで換算すると4,5フレーム遅れて音が聞こえるわけです。
コーデック | ビットレート(Kbps) | 遅延(msec) |
SBC | 328 | 220 |
aptX | 352 | 70 |
aptX HD | 576 | 105 |
aptX Low Latency | 280~420 | 40 |
AAC | 256 | 800 |
LDAC | 330~990 | 1000 |
仮にゲームにおいて操作が5フレーム遅延したら、これはもう絶対にプレイヤーには分かるどころか、とても遊べたものじゃありません。
ですが「ゲームのSE」が5フレーム遅れて聞こえるような状況は果たして許容できるのでしょうか?
aptX-LLは公称40msecの遅延で、これは60FPSのゲームだと2,3フレーム程度です。
実際、aptX-LLのヘッドフォンBang & Olufsen H9 3rdを使ってFF14を半年ほどプレイしてきましたが、遅延が気になった事は一切ありません。
音ゲーをやる人はひょっとしたら遅延が気になるのかもしれませんが、私は音ゲーは殆どやりませんので有線のヘッドフォンと比べても全然違いが分からないレベルです。
ソニーのWH-1000XM3については、ネット上のレビューは目に付く限り殆どが絶賛と言っていい高評価なんですが、どうせステマブログの商業記事ばっかりでしょうし、aptXの遅延がゲームプレイに耐えないものだったら\33,000という決して安くないお金をドブに捨てることになるなあ、と悩んでいました。
aptX-HDでゲームは無理。遅延が酷すぎて使い物にならない
私が使っていたBluetoothトランスミッターは「aptX-LL及び、aptX-HDにも対応している」製品だったため、何が起こったかというと、WH-1000XM3との接続にはaptX-HDが選択されてしまいました。
このトランスミッターは幸いにして「現在ヘッドフォンに送信しているコーデックは何か?」というのがちゃんとLEDの点灯場所で分かるようになっているためaptX-HDだというのが判明したわけですが、このコーデック、遅延が酷すぎます。
もうですね、FF14のログイン画面で既に「あ、これダメだ」と分かるレベルです。
ログイン画面でキャラクターを選択した際に毎回ダイアログが表示されますが、あのUIのボタンにマウスカーソルが乗ると「カシャ」というSEが鳴ります。
これが、カーソルがボタンに乗ってから体感0.5秒ぐらい遅れて「カシャ」という音が聞こえる、そんなレベルです。
ゲーム中でも、あらゆるUIでボタンにカーソルが合う度にこの「カシャ」というSEが再生されるのですが、あからさまに絵と合っていません。
自キャラが走ってから立ち止まっても、画面上でキャラが立ち止まってから1歩遅れて足音も停まる、という感じです。
まさに「、、、音が、、、遅れて、、、聞こえて、、、来るよ」状態です。
全てのSEがこの調子ですし、体感で0.5秒~1秒ぐらい遅れているように聞こえるので、aptX-HDはゲームのようなインタラクティブなコンテンツでは全く使い物にならない、というのが分かりました。
aptX-HDの音質はaptX-LLと大差ない
aptX-HDは遅延の酷さもさることながら、HDとか称してる癖に全く音質が良くありません。
aptX-LLとaptX-HD,aptXの3種類の音を聴き比べましたが、私には全く違いが分かりませんね。
どのコーデックも等しく糞音質です。
そうなるとaptX-HDは「ただの遅延の酷い糞音質」って事になるわけで、このコーデックが選択される時点で致命的と言えます。
Bluetooth界隈はコーデックをユーザーが選択できないので、トランスミッターを換えるしかない
Bluetoothのワイアレスヘッドフォンは、基本スマホに接続する用途がメインで、その場合は専用アプリをスマホにインストールすればコーデックの選択や音質調整のためのイコライザーといった機能が使えるようです。
ですがPCと接続する際にはサウンドカードから出力されたデータをトランスミッターに入力し、そのトランスミッターとヘッドフォンとの間で勝手にコーデックが選択されてしまいます。
このコーデック選択の仕様は「製品次第」であるため、私が使っていたトランスミッターの場合、WH-1000XM3がaptX-HDに対応しており、トランスミッター自身もaptX-HDに対応しているので、優先度的にaptX-HDで送信するようになったのでしょう。
これをユーザー側で変えることができないため、aptX-HDではなくaptXが選択されるためには「aptX-HDに対応していないトランスミッターを買う」しかありません。
仕方ないのでトランスミッターを買い換えましたよ。
この理不尽さはさすが最悪の糞規格であるBluetooth界隈なんですが、新しい製品になればなるほど「aptX, aptX-LL, aptX-HDに対応!(但しユーザは選択できない)」となってますので「Bluetooth5.0且つ、aptX-HDには対応していない」という条件に合致するものは非常に限られています。
近いうちにこういう製品もモデルチェンジで無くなってしまう事が予想されます。
そうなるとWH-1000XM3をPCで使うにはaptX-HDでしか接続できない、という事になってしまいますね。
aptXならまぁ、慣れれば気にならないレベルの遅延
aptX-HDに対応していないトランスミッターに買い換え、aptXで接続してみました。
はっきり言ってaptXでも遅延は分かります。aptX-LLとは歴然とした差があります。
ですがまぁ、FF14のプレイに関してはすぐに慣れて気にならなくなる程度です。
これはMMOタイプのゲームだから、というのもあると思います。
aptXのヘッドフォンがゲームプレイに使えるのは、せいぜいオフラインのアクションゲームまででしょう。
音ゲーはまず無理。FPSも怪しいと思います。
これらのゲームをプレイする場合は素直にaptX-LL対応のヘッドフォンか、有線ヘッドフォンを使うしかありませんね。
遅延を我慢してでもノイズキャンセリング性能を取る?
WH-1000XM3について、もっとも食指がそそられたのは「ノイズキャンセリング性能が段違いで高い」という評判です。
私はノイズキャンセリングヘッドフォンを過去にも何個か購入していますが、周りの音をシャットダウンする性能に関してはBOSEのQuiet Comfort シリーズがずば抜けていると思っています。
が、ソニーのWH-1000XM3については「BOSEよりもノイズキャンセリン性能が高く、尚且つBOSEのような圧迫感が無い」というネット上の評判です。
BOSEのQuiet Comfortシリーズは確かにノイズキャンセリング効果は高いのですが、NCをONにした途端、気圧が変化したかのような圧迫感が生じます。
大げさに言うと飛行機に乗ってしばらくすると高高度で耳がツーンとするあの感じです。
このおかげで周りの音がかき消されてるんだろうなという感じはしますが、圧迫感としかいいようがないものが耳の中に発生しますね。
まぁこれはそんなに気になるものではないのですが、ネット上のレビューによるとソニーのWH-1000XM3はこのBOSE製品にありがちな圧迫感も無いとの噂です。
結論:コーデックをaptXで使う前提であれば、WH-1000XM3の圧勝
「コーデックはaptXが選択される」という条件が必須ですが、これさえ満たせばFF14のプレイに支障はありません。
私の結論としては、Bang & Olufsen H9 3rdと比較した場合、WH-1000XM3の方が総合的に見て圧勝です。
以下に、WH-1000XM3の優れている点を挙げます。
ノイズキャンセリング性能が口コミ通り素晴らしい
ソニー製品なので正直疑ってましたが、これはネット上の評判通りでした。
BOSEのQuiet Comfortと比較した場合、圧倒的な差はありませんが、同等かそれ以上に周りのノイズをカットしてくれますし、BOSEのような圧迫感や無音時のホワイトノイズが殆どありません(皆無ではない)。
Bang & Olufsen H9 3rdとの差は歴然で、ソニーやBOSEと比べるとBang & Olufsen H9 3rdのノイズキャンセリング性能は頭一つへこんでますね。
値段が比較的安い
私がBang & Olufsen H9 3rdを購入した際には\53,000ぐらいの値段でしたが、WH-1000XM3は\33,000で買えてしまいます。
2万円も差があるのにBang & Olufsen H9 3rdが勝っているのはaptX-LL、ただこれだけです。
その他の性能は全てWH-1000XM3が勝っているので、極端な話aptX-LLじゃないとどうしても遅延が気になって我慢できない、という人以外、Bang & Olufsen H9 3rdを買う理由は皆無だと思います。
バッテリーの持ちがノイズキャンセルONで30時間と圧倒的に長い
Bang & Olufsen H9 3rdもノイズキャンセルONで連続使用26時間と充分長いのですが、WH-1000XM3はさらに4時間長いと自称してます。
まぁソニーなんでどうせ数字を盛ってるに違いありませんが、それを差し引いてもノイズキャンセルOnでワイアレスのまま丸1日以上使えるというのは頼もしいです。
実際使ってみても、12時間程度電源を入れっぱなしにしておこうが全く気にもならないぐらい充電池の持ちには安心感がありますし、使っている間に充電が切れたなんて事は1度もありません。
一方で送信機側のBluetoothトランスミッターも今や殆どが充電式なんですが、こちらは最長でも12時間程度しか充電が持たないという製品ばかりです。
このため、長時間連続使用する場合は、トランスミッターは充電しながら使わないと、先にトランスミッター側のバッテリーが切れてしまいますね。
操作に対する音声通知が非常に気が利いている
バッテリーの持ちを良くするためか、常時点灯しているLEDがWH-1000XM3には皆無です。
最近のワイアレスヘッドフォンはたいがいそうですね。
ですが、WH-1000XM3は電源ボタンを長押しして電源を入れると「Power On」という音声がヘッドフォンから流れます。
また、Bluetooth接続が確立すると「Bluetooth connected」、電源断の際は「Power Off」という音声が流れます。
ノイズキャンセリングのOn/Offについても、その度に音声で通知してくれます。
これ、一見地味な機能のように思えますが、非常に良心的な仕様です。
この手のワイヤレスヘッドフォンは何故かどいつもこいつもスライド方式の物理スイッチが無く、LEDも常時点灯していないため「電源が入っているのか」「Bluetooth接続できているのか」「ノイズキャンセルがOnになっているのか」等々、ヘッドフォンの状態を見た目で判断する事ができません。
しかも、これもたいがいの製品が「電源のOn/Offは『電源ボタンを2秒長押し』」だの、「Bluetoothのペアリングは『電源ボタンを7秒長押し』」だの、使いづらい操作方法のオンパレードです。
「電源ボタンを2秒間押し続けるとまずLEDが青色に点灯し、しばらくするとゆっくり点滅し、しばらくすると消灯します。これで電源がOnです。」
「Bluetoothペアリングモードに入るには電源ボタンを7秒間押し続けます。するとLEDが青色に点灯し、しばらくするとすばやく点滅を開始します。これでペアリングモードになっています。」
こんな調子。
オンラインマニュアルが必須でユーザービリティ最悪の頭のおかしい仕様です。
こんな頭のおかしいUIになっているのは、コスト削減のためハード面でパーツをケチっているせいに違いありませんが、ソフト面で改善できないかとソニーの開発者は考えたんでしょう。
電源ボタンを2秒間押し続ける間、ユーザーに「1,2・・・アレ?もう電源入った?」と思わせず、電源が入った瞬間に「Power On」と音声を流す事で、もうボタンから手を離して良いとユーザーに通知しています。
電源を入れるたびに毎回ペアリングが外れる救いようが無い糞規格のBlutoothに対して、運よくペアリングが生きていた場合に「Bluetooth Connected」と音声を流す事で、また最初から気の滅入るペアリング作業をしなくて良いとユーザーに通知しています。
実際に使ってみて分かったのですが、この音声通知機能は神対応と言っていいぐらいの親切設計です。
Bang & Olufsen H9 3rdは、電源に関してだけは珍しくスライド式のスイッチが備わっており、電源のOn/Off及びペアリングモードの起動はWH-1000XM3よりも分かり易いです。
ですがノイズキャンセリング機能のOn/Offについては物理スイッチが無く、誤認しまくる「タッチパネル操作」で行わなければなりませんし、音声通知も一切無いので差し引きゼロですね。
装着感が普通レベルで良い
普通レベルで良いという表現もアレですが、まぁ普通です。
というのもBang & Olufsen H9 3rdの装着感が酷すぎるので、それに比べると普通でも充分良い、という意味です。
Bang & Olufsen H9 3rdの何が酷いかって、頭にかかるアーム部分が「鉄板をぐにゃっと曲げただけのものにぺったんこのウレタンを貼り付けてハイおしまい」なので、頭に鉄板を直接乗せてるレベルの装着感なんですね。
アーム部分を手で触ってみると分かりますが、もろにステンレス削り出しらしい金属を触っている感触で、カッチカチです。
しかもアームが直接頭に当たる側では無く、反対側を無意味に合成皮革の板で覆ってあり、これもカッチカチ。
見た目に高級感を持たせることしか考えていない、ダメな製品の典型例です。
一方のWH-1000XM3は、高級感は全くない、いつものプラスチッキーなアームなのですが、少なくとも頭に金属が直接当たらないようにクッションが設けられています。
まぁそれでも快適とは程遠いのですが、Bang & Olufsen H9 3rdと比較すると全然マシです。
タッチパネル操作が使い易くデザインされている
WH-1000XM3はBang & Olufsen H9 3rdと同様に、右ヘッドフォンの側面を指でなぞる事でボリュームの上げ下げができます。
スマホと接続している場合は、このタッチパネル操作で音楽の再生、停止、曲送り等もできます。
PCと接続している場合はボリュームの上げ下げぐらいしか使わないのですが、WH-1000XM3は右ヘッドフォンの側面を上から下へ真っすぐなぞるとボリュームが下がり、下から上へ真っすぐなぞるとボリュームが上がります。
WH-1000XM3のいいところは、上から下へ真っすぐなぞる、下から上へ真っすぐなぞる、という操作をする度に「ピッ」という音が鳴り、アナログではなくデジタルで1段階ずつボリュームが上下する点です。
音量変化の幅も、1回の操作ではっきり上がった、下がったというのが分かるようになっています。
「自分では見えない右ヘッドフォンの側面を指でなぞる」という極めて不便な操作なんですが、UIでちゃんとカバーしている設計ですね。
一方Bang & Olufsen H9 3rdの場合は、右ヘッドフォンの側面を右回りになぞるとボリュームが上がり、左回りになぞると下がるというアナログ操作になっており、音の変化が微妙、且つ通知音も一切鳴らないので、ちゃんと操作できているのがさっぱり分かりません。
こういったUIデザインの差は、流石ソニーと言えます。
条件付きだがWH-1000XM3でFF14は問題なくプレイできる
FF14をプレイするにあたってBang & Olufsen H9 3rdとWH-1000XM3のどちらの方が快適かというと、トータルではWH-1000XM3の圧勝です。
但し、以下の点に注意です。
- コーデックは確実にaptXが選ばれるトランミッターを使う必要がある
- aptXの遅延は最初は気になるが、すぐに慣れる
- FF14のSEの音質が酷いのは変わらず、Bang & Olufsen H9 3rdと大差ない
ソニーのヘッドフォンがaptX-LLに対応しさえすれば、ゲーム用途としても覇権が取れるのは確実だと思うんですが、何故だか今のところソニー製品は一切aptX-LLに対応していません。
まぁどうせ、次のモデルチェンジでaptX-LLに対応して新製品として売り出すために勿体ぶってるだけだと思いますがね。